退去が決まった「市営住宅・公営住宅」…高齢の親の部屋、何から手をつければいい？

市営住宅（公営住宅）で高齢の親が一人暮らしをしていた場合、退去が決まった瞬間からやることが一気に増えます。
「片付けだけで終わると思っていた」「掃除は最後に軽くでいいでしょ？」と思っていたのに、実際は退去期限・立会い・原状回復が絡んで、家族側の負担が想像以上に大きくなりがちです。

この記事では、ハウスクリーニングの現場に日々入っているプロの視点から、市営住宅の退去清掃で家族が迷いやすいポイントと、自力でやる範囲／業者に任せるべき基準を整理して解説します。

1. 市営住宅の退去で「家族が詰みやすい」3つの原因

まず前提として、市営住宅の退去は「引越し後にゆっくり掃除」では通りません。特に高齢者一人暮らしの場合、以下の理由で一気に詰みやすくなります。

• 期限が短い：退去日・明渡日が先に決まり、後ろ倒しにできない
• 生活年数が長い：汚れが積層していて、短時間では落ちない
• 家財が残りやすい：家族が想像するより「物が多い」ことが多い

【清掃スタッフのコメント】

市営住宅の退去は「片付け」と「清掃」を分けて考えないと、ほぼ確実に間に合いません。
家財の搬出に体力と時間を取られて、最後の掃除が雑になり、結局やり直し…というケースが多いです。

2. 退去清掃は「何をどこまで」やればいい？（基本の考え方）

市営住宅の退去では、自治体や管理先によって求められるレベルが異なることがあります。
ただ、家族がまず押さえるべき考え方はシンプルで、「次の人が普通に住める状態」＋「目立つ汚れを残さない」です。

特に、指摘が入りやすいのは以下のポイントです。

• 水回り：浴室（カビ・水垢）、トイレ（尿石・黄ばみ）、キッチン（油・ヌメリ）
• 床・壁：ベタつき、黒ずみ、ヤニ汚れ
• 換気扇まわり：油汚れ、ホコリ詰まり
• 窓・サッシ：砂・カビ・結露跡

3. 家族がやりがちなNG｜「最後にまとめて掃除」が一番危険

退去前の現場でよくある失敗は、家財を出し終えてから最後に掃除しようとしてしまうことです。
実際は、家財の搬出で体力を使い切り、掃除まで手が回らず、退去当日に焦ります。

おすすめは、次の順番です。

1. 期限の確認：退去日・立会い日・鍵返却の条件
2. 家財の整理：残す物／捨てる物／引き取る物を先に分ける
3. 粗大・不用品の搬出：大物を先に出して作業導線を作る
4. 部分清掃：水回りなど、汚れが強い箇所は早めに着手
5. 仕上げ清掃：床・窓・全体拭き上げ

【清掃スタッフのコメント】

水回りの汚れは「時間をかければ落ちる」ではなく、
固着していると市販洗剤では限界が出ます。
退去直前に気づくと手遅れになりやすいので、早めの判断が大事です。

4. 「退去清掃は業者に任せるべき」判断基準

以下に当てはまる場合、家族だけでやり切るのはかなり厳しいラインです。
1つでも当てはまれば、早めに業者へ相談するのが安全です。

• 退去日まで1週間を切っている
• 浴室の黒カビ・水垢が広範囲
• トイレの尿石・黄ばみが固着している
• キッチンの油がベタついて層になっている
• 換気扇・レンジフードなど分解が必要
• 家族が遠方で、作業日を複数回取れない
• 退去に加えて、家財整理（不用品搬出）も必要

特に高齢者一人暮らしの部屋は、生活年数が長いほど汚れが蓄積しやすく、“普通の掃除”では取り切れない汚れが出てきます。

5. 自力でやる場合の「最低ライン」だけ押さえる

「全部は無理だけど、できる範囲でやりたい」という場合は、完璧を目指さず、退去時に指摘されやすい場所を優先してください。

• 浴室：排水口・床・壁のカビ（見える範囲）
• トイレ：便器のフチ裏・床の飛び散り
• キッチン：シンク水垢・コンロまわりの油
• 床：掃除機 → 水拭き（ベタつきがあるなら洗剤拭き）

ここを押さえるだけでも「印象」は大きく変わります。逆に、ここが弱いと全体がきれいでも減点されやすいです。

6. まとめ｜市営住宅の退去清掃は「片付け＋清掃」をセットで考える

高齢の親が一人暮らししていた市営住宅の退去は、家族にとって精神的にも時間的にも負担が大きいです。
だからこそ、ポイントは次の3つです。

• 期限を先に確認して、逆算で動く
• 片付け（搬出）と清掃を別物として段取りする
• 迷ったら早めに相談して詰む前に手を打つ

「退去日が迫っている」「水回りがどうしても落ちない」「家財整理も同時に必要」など、状況によって最適解は変わります。
無理をして家族が倒れる前に、一度プロに相談してみてください。