公営住宅の退去掃除は「どこまでやればOK？」ケアマネが押さえておくべき判断基準

公営住宅・市営住宅で暮らしていた高齢者の退去が決まった際、
ケアマネジャーや支援員が家族からよく聞かれるのが、

「退去掃除って、どこまでやればいいんですか？」
「業者を入れないとダメですか？」

という質問です。

この記事では、ハウスクリーニングの現場に日常的に入っている立場から、
公営住宅の退去掃除で“最低限求められるライン”と、
業者判断が必要になる境界線を、ケアマネ向けに分かりやすく整理します。

1. 公営住宅の退去掃除は「原状回復」ではない

まず大前提として、民間賃貸と違い、公営住宅の退去掃除は「原状回復工事レベル」までは求められません。

多くの自治体で求められるのは、

• 次の入居者が生活できる最低限の清潔さ
• 明らかな汚れ・悪臭・害虫の温床を残さないこと

つまり、「生活汚れの除去」が基準であり、
新品同様に戻す必要はありません。

ここを誤解して「全部完璧にやらないといけない」と思い込むと、
家族・支援側の負担が一気に跳ね上がります。

2. 最低限やっておくべき「退去掃除の範囲」

ケアマネが家族に伝える際は、
まず以下の最低ラインを押さえてもらうと判断しやすくなります。

• キッチン：シンクの汚れ、コンロ周りの油、排水口
• 浴室：床・壁のカビ、排水口の汚れ
• トイレ：便器内外、床の汚れ
• 床：ゴミ撤去後の掃除機がけ＋簡易拭き
• ゴミ・残置物：私物・生活ゴミを残さない

この範囲が押さえられていれば、
「掃除がされていない」と指摘されるリスクは大きく下がります。

3. 自力対応が厳しくなる「境界ライン」

一方で、以下に当てはまる場合は、
家族や支援者だけでの対応は難しくなります。

• 長期入居で汚れが層になって固着している
• 浴室やキッチンに黒カビ・油汚れが広範囲
• 室内に強い生活臭・カビ臭が残っている
• 家財・不用品の量が多く、掃除まで手が回らない
• 退去期限が迫っており、作業日を複数取れない

この段階になると、「掃除をする時間がない」のではなく、
「掃除の質が足りない」状態になりやすいです。

4. ケアマネが知っておくと助かる実務的ポイント

現場でよくあるのが、
「家族が一生懸命やったのに、結局やり直しになる」ケースです。

その原因の多くは、

• 家財搬出で体力を使い切ってしまう
• 水回りを最後に回して時間切れ
• 市販洗剤では落ちない汚れに直面する

ケアマネが事前に、

• 「水回りが厳しそうなら早めに業者相談」
• 「片付けと掃除は別工程として考える」

と一言添えるだけで、
家族側の負担とトラブルはかなり減ります。

5. 業者に相談するベストなタイミング

「もう少し様子を見てから…」となりがちですが、
実は一番いい相談タイミングは“迷った時点”です。

掃除を進めてから依頼すると、

• 二度手間になる
• 日程が合わず間に合わない

といった事態が起きやすくなります。

「ここまでは自力、ここからは業者」
という切り分けを早めに行う方が、
結果的に家族・支援者・本人すべてが楽になります。

まとめ｜ケアマネが伝えるべき退去掃除の考え方

• 公営住宅の退去掃除は原状回復ではない
• 最低限の生活汚れ除去が基準
• 水回り・臭い・固着汚れが判断の分かれ目
• 迷ったら早めに業者相談が安全

退去対応は、掃除だけでなく、
家族の感情・時間・体力も消耗しやすい場面です。

ケアマネとして「判断の物差し」を提示できると、
支援全体がスムーズに進みやすくなります。